一つの虹には七つの色がある。それらは一つたりとも欠かせない、だが一つたりとも調和しない、不安定な色たちだった。
私――博麗霊夢は、雨上がりに架かる虹を見つめながら、湿潤とした空気にため息を漏らす。
七色は鮮やかに、それでいて個性的な色を放ったまま、ただただ博麗神社を見下ろしていた。
ふと思う。もしかしたらこの虹を、この七色を見つめている世界が、色と同じように、七つあるのではないのかと。
それぞれの色が集まって虹を作っているのならば、それぞれに当てはまる色の世界があるのではないかと。
そうして集まった虹が、私たちを見下ろしているのではないかと。
同じように空を見上げる世界がどこかにあるはずなのだろう。
同じように虹が見つめる世界もどこかにあるはずなのだろう。
縁側に座って煎餅を齧る。そうして幻想郷は終わっていく。
まだ見ぬ世界に胸を躍らせる。そうして一日は終わっていく。
眩い光に目を細めた先、虹は朱に染まりつつあった――